Scala開発者のための性能チューニングテクニック

April 13, 2023

はじめに

性能問題が起きるのは、アプリケーション全体の一部分に限られることが多く、開発時に常に性能特化した実装に注力する必要はありません。むしろ、可読性を重視した実装に取り組むべきです。 性能改善は、問題が発生した場合に適切に対処すれば十分で、性能が悪化する実装を避けることが重要です。 往々にして、性能問題はデータベースに起因することが多いですが、アプリケーション自体に問題がある場合もあります。このような場合には、適切な対策を講じることで性能を向上させることが可能です。 総じて、開発時には可読性を重視し、性能問題が発生した際に効果的な対策を行うことが、アプリケーション開発において望ましいアプローチとなります。 処理性能に大きな影響を与える問題がある部分を特定し、その原因を調査して解決する方法が一般的です。しかし、ここでは詳細を省略し、代表的な汎用性のあるテクニックのみを記載します。 ここに記載した対応だけでは、処理性能の改善が達成できない可能性も十分に考えられます。

汎用性のある性能改善テクニック

コレクションの最適化

使用するコレクションの選定1

Scala には、主に 3 つのコレクションがあります。それらは、Seq、Set、Map です。 一般的には、Seq が最も使われるコレクションですが、特定の状況下では、Set や Map を利用することで処理性能が大幅に向上し、論理的な整合性をより適切に表現することができます。 Set や Map は、デフォルトで HashSet と HashMap が実装されています。これらの主な特性として、要素の順番が保証されないものの、高速な検索が可能であり、コレクションの要素数に関わらず平均的に O(1)の定数時間で検索ができます。

例えば、大量の要素を持つコレクション Seq に対して繰り返し find 等の処理を行う場合、Map に切り替えることで大幅な性能向上が見込めます。

特に、組み合わせ・集合を取り扱う際には、可読性と処理性能の観点から、Set を使用することが推奨されます。

// Seqは並び順を考慮しないと等価と判定されない。
Seq(1, 2, 3) == Seq(2, 3, 1) // false

// Setは並び順を考慮しなくても等価と判定される。さらに処理性能が向上する。
Set(1, 2, 3) == Set(2, 3, 1) // true

このように、Scala の各コレクションは、状況に応じて適切に利用することで、効率的なプログラムを実現することができます。

並列コレクションの使用2

標準ライブラリには、並列コレクションが含まれており、これを使用することでコレクション内の要素を並列に処理することができます。これは、コレクションの各要素を同時に処理する場合に非常に有効です。

また、パフォーマンスをさらに向上させるために、並列コレクションの並列度を調整することができます。ただし、単純に並列度を上げるだけでは、必ずしも最適なパフォーマンスが得られるわけではありません。

並列度の調整は以下のような方法で行うことができます。

val parseq: ParSeq[_] = ???
parseq.tasksupport = new ForkJoinTaskSupport(new ForkJoinPool(4)) // ParSeq の並列度を 4 にする
parseq.foreach(_ => task)

上記のコードでは、ParSeq の並列度を 4 に設定しています。これにより、タスクが 4 つの並行処理に分割され、処理が高速化されることが期待できます。 ただし、並列度の最適な値はアプリケーションや状況によって異なるため、適切な値を見つけるためには実験が必要です。

脚注


Written by Gayamasan who lives and works in Japan.